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少女が次に向かったのは、城から少し離れた神社だった。
実吉は次第に少女に心を開いていた。
まるで嵐かのような行動力、自分の立場を意気がらない清々しさ、そしてなにより、笑うと太陽のように眩しい笑顔に、暗闇の中に光を見つけたような気分だった。
最初は流されるままについてきて、正直めんどくさいと思った。でも、久しぶりに走った。久しぶりに笑った。久しぶりに、空を見た気がした。
実吉は、聞いて欲しいと思った。自分のことを知って欲しいと。受け入れて、欲しいと。
そして、階段を先に先にと登っていく少女に口を開いた。
「さっきの質問だけど、」
すると、「ん?」と顔をこちらに向ける少女。
「聞いて欲しいんだ。何故、僕が君の城に居たのか」
真剣な表情の実吉に、少女は「 話してくれるの?」
と笑い、一段一段降りて来る。
同じ段になると、2人で腰を下ろした。
ふー、と息を吸い、実吉は話し始める。
「僕の家族は、殺されたんだ」
そして、あの日の出来事を話し始めた。
すると、
「 もういい、もういいよ、実吉 」
と何故か少女が目に涙を溜めながら手を握っている。
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