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それから少しずつ涙が止まり、落ち着いた頃。
「 梅ー!」
「梅ちゃん」
「梅はん」
と3つの声が響いた。
その声を聞いた少女は「あ!」と立ち上がり、声のする方へ手を振る。
「 弦!花ちゃん!六助!」
階段の下から年の近い3人の少年少女が手を振り駆け上がってきた。
「 よお、梅 」
「 よお、弦 」
ニッと笑い腰に手を当てて挨拶をするのは先程の団子屋の息子の弦だ。年は12歳で、梅と実吉より2つ年上である。
「 梅ちゃん、せっかくのお着物が汚れちゃう。ちょっとごめんね 」
「 あら、本当だ。花ちゃんいつもありがとう 」
手拭いで着物の汚れを落としてくれているのは、街の呉服屋の娘の花代という子で、梅と実吉と同い年だ。
「 梅はん、隣の坊は誰ですの?」
と少し遅れて合流してきたのは花代の兄の六助だ。
弦と同じ年である。
「 実吉と、申します 」
「 ほう、実吉はん。僕ら梅さんとは仲ようしてもろうてましてな、自分、六助言います。実吉はんもどうぞ、よろしゅう頼んます 」
袖口を口に当てて喋る六助に、
「 お兄ちゃん、もごもご喋らないの。でも、梅ちゃんがここに連れて来るってことは、私達に紹介する為でしょう?」
とため息混じりに横目に兄を見ながら、「 そうなんでしょ?梅ちゃん」と笑顔で梅を覗き込む花代。
「 そう、弦の団子屋さんに寄ればみんなを連れて追いかけて来てくれると思ったの。この子は実吉。わたしの新しいお友達です。そして今日からみんなのお友達です 」
と花代にお礼を言い、実吉の紹介をする梅。
急な出来事に戸惑っていると、
「 よろしくね、実吉君 」
と花代が言い、つられるように弦も、
「 よろしくな、実吉 」
と口を開いた。
「 よろしく 」
実吉は恥ずかしそうに頭を下げたのであった。
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