夜の片隅

3/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
みんなに信頼される、優しくて人気者の上司。しかし、普段の彼は、こうして優しい口調で意地悪を言ってくることが多々ある。最初こそイメージと違い驚いたけれど、今では言われすぎて慣れてきてしまったし、この上司に恋心まで寄せているのだから人の気持ちとは不思議なものだと思う。 「ミスについては……すみません。最近フォローしてもらってばっかりですよね」 平野さんがいる右側に体を向けて頭を下げる。すると、彼は再び口角を上げて笑いだした。 「はは、いいよいいよ。フォローくらいどうってことないし、それが俺の仕事だから」 「でも」 「でも、じゃない。春川は、ちょっと深く考えすぎ。まぁ、それは誰よりも責任感があるからこそなんだけど、もうちょっと背負いすぎずに他人を頼りなさい」 ね? と、付け足してこちらを覗き込む平野さん。 こういう彼の言葉や表情に助けられ、惹かれた人が一体世の中には何人いるんだろう。なんて、ふとそんなことを考えてしまった。すると。 「それで、どうして仕事に支障が出るくらい元気がないんだったっけ?」 また話題は、振り出しに戻されてしまった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!