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今まで僕に強くものを言っていたのは、僕を跡継ぎにしたがっている母くらいのものだ。他の人達は僕に気を遣っているのか、僕の言葉を肯定するばかりでね。
昔偶然耳にしたことなんだけど、いつも僕の言葉にニコニコしながら頷いていた同級生が「七瀬に逆らうと、どんなことされるか分からない」と陰で言っていて驚いたよ。
過保護な母と七瀬財閥の財力を考えれば、僕が母に同級生にいじめられたと泣きつけば、きっとその家族に社会的な死を与えてくれるだろう。でも僕はそんなこと考えもしなかった。
フィクション作品の影響も手助けし、“金持ちは気に入らなかったらあの手この手でその人を潰す”と思われたんだろう。だから誰もが僕に嫌な顔見せずに、作り笑いで寄ってくる。
そんなのにうんざりしていたところに、白浪さんのアレだ。いい意味でカルチャーショックだったよ。まぁ、こうしてへこんでもいるけどね。
それでもファンの子達といるよりは、白浪さんといた方が気楽でいられると思う。
正直、ファンの子達は本当に僕の作品を面白いと思ってくれているのか、甚だ疑問だった。この子達は僕自身ではなく、僕の地位と顔に寄ってきているのではないか、と何度も考えた。
だけど白浪さんは、僕にはっきりとものを言ってくれた。彼女が友達なら、過剰に気を遣われずに、人並みの青春を過ごせる気がする。
まぁ、こっぴどく言われてから挨拶をする程度なのだけれども。
僕が素直になって話をして謝れば、彼女は友達になってくれる気がする。あのあと言いすぎたと謝ってくれた白浪さんなら、笑って許してくれると確信めいたものがあるんだ。それでも話しかけられないでいるのは、自分でもよく分からないんだろうけど、プライドなのかもしれない。
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