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「初めまして、最近はぐるまで働き出した白浪奇子です。朱音くんとは、同じ学校に通ってます」
白浪さんは自己紹介をすると礼儀正しく一礼するけど、ダメだよ白浪さん……。あぁほら、海野さんが僕を睨んでる……。
「ところでふたりは恋仲なのかい?」
海野さんの機嫌をなおすためという意味もあるけど、春川さんには酷な質問だろう。でも、彼女が一歩踏み出すためにも必要な質問だ。
「そうだ。だからもうちょっかい出すなよ」
「分かっていますよ」
海野さんはそうかい、と短く返事をすると、白浪さんに視線をやる。
「奇子、春川さんにダージリンティー、ボンボンにはホットココアを」
「ふふ、分かりました」
白浪さんはお湯を沸かし始め、厨房内を歩き回る。海野さんは海野さんで、なにやら作業を始めた。僕達はドリンクしか注文していないというのに、いったい何をしようというのだろう?
「お待たせしました、ダージリンティーとホットココアです」
白浪さんは僕達の前に、それぞれ注文したドリンクを置いてくれる。
海野さんは何かを焼いているらしく、バターの香ばしい香りがしてきた。
「お待ちどうさん。いつも安くて美味いパンを作ってくれてる礼だ。坊ちゃんには、ついでにな」
僕達の前に置かれたのは、厚切りの食パンで作られたフレンチトーストだ。4等分されていて、真ん中にはバニラアイスが乗っている。
「え、いいんですか……?」
春川さんは目を丸くして海野さんを見上げる。
「さっきも言ったろ? 礼なんだから、遠慮せずに食ってくれ。ちなみに坊ちゃんのは、ココアに合うように甘じょっぱく作ってある」
「ありがとうございます、いただきます」
春川さんは手を合わせると、フレンチトーストを一口サイズに切り分け始めた。僕も手を合わせてからカットして、一口食べる。
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