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逃げなければと頭の中で警告音が鳴り響く。しかし逃走路を探しているうちに、気が付けば壁際まで追い詰められていた。知れず、庇うように胸元を押さえてしまう。
「なんでもクソもあるか」
貴文は問答無用で俺の腕を掴むと、ブレザーを掴んだ。
「何するんだよっ、い、意味分かんなっ……」
彼の力は、ガリの俺より明らかに強くて、俺はろくな抵抗もできないまま、ブレザーを剥ぎ取られる。
「やめっ……!」
貴文は無言だった。無言で暴れる俺を抑え付け、次いでワイシャツを脱がしに取り掛かる。ブチブチと音がして、ボタンが飛び散った。
「おまっ、シャツ破れてっ……!」
「後で買ってやる。……で、これはどういうことだ?」
鋭い眼差しで俺を見やり、彼はガムテープでグルグル巻きの胸部を指さした。
「こ、これは……」
恐怖と混乱が胸に去来して、うまく言葉を紡げない。
棒立ちする俺に、貴文はクツクツと意地悪く笑った。
「今更、隠すとか不可能だからな。全然、潰れてないし。……んで。お前、いつから女だったわけ?」
速攻でバレた。それでも答えるのを渋っていると、殿様が帯をグルグル解くみたいに、貴文は俺のガムテープを外した。
白シャツの下に隠しようのない豊満な胸が現れる。
「いつからって……」
「昨日までは、そんなもんなかった。だろ? 俺の目は誤魔化せねえ」
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