5 ■ 憧れと恋心 ■

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 でも、母にはこれ以上心配させたくなかったから、言わなかった。 「翔太。一緒に帰ろう。帰り道、同じだろ?」  そんな俺に、貴文は声をかけてくれた。  転校してきたばかりだったから、俺がクラスでどんな扱いを受けているのか知らなかったのだろう。でも、彼の態度は二ヶ月後も、半年後も変わらなかった。彼は、不思議と俺のことを気にかけてくれた。 「……」 「……」  何か話があったわけじゃない。俺たちは無言で帰った。  貴文の目的は分からなかった。俺と一緒にいたって、何のメリットもない。  でも、俺は違う。貴文がいれば一人ではなかった。  不思議と、小突かれたりすることも減った。  そんな日が続き、やがて小学校5年も終わる頃。  貴文も、前は母子家庭だったのだと知った。お母さんが夜のお店で働いていたことや、彼の母の再婚相手が、お金持ちのお爺さんだと言うことが噂になったのだ。  そんな大人たちの話を聞いたのだろう、貴文を嫉んでいたやつらは、まるで鬼の首をとったかのように、その話を吹聴して回った。母と息子は買われたのだと。  貴文の人気に翳りがさし、俺のポジションまで落ちてくるまで時間はかからなかった。  やがて、貴文は誰とも話さなくなり、俺と下校することすら避けるようになった。     
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