5 ■ 憧れと恋心 ■

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「良かった」 「お、俺は、いらねぇからな!」 「なぁ、なぁ、貴文。お前のコレクション見せてよ。俺ら、お前の見せてもらったことないし」 「もちろん。それじゃあ、放課後みんなでトレードしない?」 「賛成!」 「え、あ、おい、待てよ……っ」  その日から、貴文は変わった。  以前のような人気者とは違う……どちらかといえば、王者のような立ち位置に。  彼は徹底的に自分の地位を確立した。自分に対立するやつは金で懐柔し、それにのらないやつは、周りの生徒を使って追い詰めて徹底的に潰した。  学年の流行りは、貴文が作った。  彼に従わないやつは軒並み仲間外れにされた。  そして、従うやつには、彼は湯水のごとく金を使った。「俺にも金さえあれば」と言った奴がいたけど、金だけで支配するのは並大抵なことじゃないだろう。俺には到底真似はできない。  彼の新しい父親も、後押しした。彼の父は学校に寄付をし、自治会に寄付をし、子供会にも莫大な金を払った。  みんな、金の前に膝を折った。そもそも貴文の親は悪い人というわけではない。ただ、なんとなく『金持ち』『かなりの年の差再婚』に反感を覚え、中傷していただけなのだ。     
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