5 ■ 憧れと恋心 ■

7/7
前へ
/72ページ
次へ
 こうして6年になると、貴文は学級委員になった。  そして、中学では生徒会長に君臨し、そして、高校生になった。  俺は、彼の庇護下で学校生活の大半を過ごした。貴文の雑用係をいじめる奴はいない。 『彼が俺を助けてくれたように、俺も彼の役に立ちたい』  俺はいつしか彼の役に立つことに、自分の人生の意味を見いだしていた。  今は、その他大勢と同じだとしても、もっと役に立てれば彼の特別になれる。想いは通じる。  しかし、悲しいことに俺は男だ。恋人のように彼を満足させることはできない。中学の頃、男は嫌いだと明言した貴文は、全く男にプライベートの話をしなくなった。  俺は滑稽なまでに彼のために、奔走した。けれど、頼まれることと言えば精々雑用係で、代替ができるものばかり。それが悔しくて、悔しくて、たまらなかった。  ――でも、今は違う。俺はもっと深く、物理的に彼の役に立てる。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

326人が本棚に入れています
本棚に追加