2 ■ 貴文と俺 ■

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(……ゴミって。本当、酷い言いようだな)  小中高一貫、某私立大学系属校のココでは、生徒の質はピンキリだ。  政治家や一線の実業家を親に持ち金だけはある問題児と、国内最高と言われる難関受験をクリアして入学してきた生徒が一緒くたに生活している。  貴文の取り巻きは前者だ。もっと言えば、貴文自身も前者に属する。一方、俺はお受験組みだ。  といっても、品行方正というわけじゃない。俺は悪くもなれず、真面目にもなれず、中途半端に平凡な男子生徒だった。成績だって下から数えた方が早い。 「立ち入り禁止」と書かれた張り紙付きのハードルをまたぎ、扉を開けると、爽やかな風とともに、賑やかな笑い声が聞こえてきた。  抜けるような青空の下、制服をだらしなく着込んだ五、六人の男女がコンクリートの床に座り込んで話しているのが目に入る。 「貴文、待たせてごめん。買ってきたよ」  俺が声をかけると一斉に生徒たちの目がコチラを向いた。ついで一人が軽く手を上げた。貴文だ。 「おう、翔太。ありがとな」  親しげな笑顔を浮かべて俺をこまねく彼は、ハーレムの主人のように女生徒を二人、両脇に侍らせている。 (櫻井さんと山岸さん……そうか、今日は水曜日だもんな)     
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