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秘密を覗くな!
とても寒い、空気の澄んだ朝だった。
B「焼きいもやさーん──あれ、パンやさんに変わったんですか?」
A「いらっしゃいませ! 焼きいももありますよ」
B「パンをカバンにしまった!?」
A「おいくつご入用ですか? できたてアツアツですよ」
B「そしてそこから焼きいも出てきた!」
A「移動販売員のカバンなんて大体こんなモンです」
B「雑にも程がありません?」
A「大丈夫! きちんと整理整頓してますよ」
B「いや、そういう問題じゃ……パンをそのままカバンにしまうとか、はじめて見ましたよ?」
A「ほんとに大丈夫ですって。このカバンはとても優秀なんで……また出しても──このとおり!」
B「あっ、さっきのパン……ほ、ほんとだ……中の具もケチャップのラインも、全然乱れてない……」
A「でしょう? 商品管理は売り子の基本ですからね」
B「そういう次元じゃないような……というか、カバンの次元おかしいんじゃ……俺のとだいぶ違うなぁー、っと」
A「──おっと! カバンの中身は売りますが、カバンの中は企業秘密ですよ」
B「えー、いくら払ったら見せてくれます?」
A「おやおや。それ聞いちゃいますか?」
B「えっ?」
A「貴様────ソノ対価をシ払ウ覚悟があるト?」
B「!!?」
とても恐ろしい寒気に襲われる。
するとそこはもう、淀んだ空気に満ちたどこかだった……。
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