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第六感とは
くるくる、くるくるとペンが回っている。
親指から小指に掛けて、往復してるようにも見える。まるでペンが生き物の様に。次は、親指の回りをくるりくるりと3回転。大技のようだ。
「やったー、トリプルノーマル!」
男が叫んだ直後、男を目掛けてげんこつが降ってきた。男は咄嗟に外を見る。降っているのは雨。げんこつではない。
「痛ってええーーえーえーーえーーえーえーーえーー。」
「うるせええーーえーえーーえーーえーえーーえーー。」
本日二発目のげんこつが降ってきた。
「おい、今は授業中だぞ。くるくるくるくるペンを回して、「よっしゃー、トリプルアクセル!」なんて騒いどる奴が居るか!馬鹿者!」
そう言った先生を、鋭い目で睨む男。その目には憎しみが籠っているようだった。
「ここに居ますけど。それにトリプルノーマルですー。よっしゃーじゃなくてやったーって言いましたー。」
男が嫌味ったらしくそう言った。先生の顔も徐々に赤くなっている。三発目のげんこつを覚悟したように、男は咄嗟に防御の姿勢をとった。
「もういい!黙って話を聞いておけ!」
呆れたように再び教卓の前へと戻っていった。生徒達は絶えず白い目を男に注いでいた。
こうして無事?授業が再開した。少し控え目にペンをくるくる。
「皆は人間の感覚器官について習っただろうが、五つの感覚を覚えてるかね。視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚の五つだな。でもな、人間にはもう一つ感覚があるんだ。それが第六感だ。」
この先生は、話が逸れる事が多い。そのあまりの多さにうんざりしてる生徒も少なくない。
「第六感って言うのはな、言わば勘だ。理屈では説明のつかない、人間の経験から生まれる感覚だ。この世にはな、第六感を発達させて利用している人間が存在するそうだ。」
なんだ、そのオカルト話。誰もがそう感じていた。
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