第六感とは

1/5
前へ
/37ページ
次へ

第六感とは

 くるくる、くるくるとペンが回っている。 親指から小指に掛けて、往復してるようにも見える。まるでペンが生き物の様に。次は、親指の回りをくるりくるりと3回転。大技のようだ。    「やったー、トリプルノーマル!」 男が叫んだ直後、男を目掛けてげんこつが降ってきた。男は咄嗟に外を見る。降っているのは雨。げんこつではない。    「痛ってええーーえーえーーえーーえーえーーえーー。」  「うるせええーーえーえーーえーーえーえーーえーー。」 本日二発目のげんこつが降ってきた。    「おい、今は授業中だぞ。くるくるくるくるペンを回して、「よっしゃー、トリプルアクセル!」なんて騒いどる奴が居るか!馬鹿者!」 そう言った先生を、鋭い目で睨む男。その目には憎しみが籠っているようだった。    「ここに居ますけど。それにトリプルノーマルですー。よっしゃーじゃなくてやったーって言いましたー。」 男が嫌味ったらしくそう言った。先生の顔も徐々に赤くなっている。三発目のげんこつを覚悟したように、男は咄嗟に防御の姿勢をとった。    「もういい!黙って話を聞いておけ!」 呆れたように再び教卓の前へと戻っていった。生徒達は絶えず白い目を男に注いでいた。 こうして無事?授業が再開した。少し控え目にペンをくるくる。    「皆は人間の感覚器官について習っただろうが、五つの感覚を覚えてるかね。視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚の五つだな。でもな、人間にはもう一つ感覚があるんだ。それが第六感だ。」 この先生は、話が逸れる事が多い。そのあまりの多さにうんざりしてる生徒も少なくない。  「第六感って言うのはな、言わば勘だ。理屈では説明のつかない、人間の経験から生まれる感覚だ。この世にはな、第六感を発達させて利用している人間が存在するそうだ。」 なんだ、そのオカルト話。誰もがそう感じていた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加