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春の嵐で桜が綺麗に散って行き、木々には青々とした葉だけが残った季節の変わり目。
風は悪戯に私の髪で遊ぶと取ってきた桜の花びらを私の頭へ乗せた。あれから何度季節を巡ったのか分からない。
数年前、私は確かに恋をしていた。
同じ教室に、当たり前に近くで過ごせていたのが夢のようだ。もしかしたら夢だったのかもしれない。だけれど確かに私の脳裏には君と過ごした日々が残っている。
正直恋だと気が付いたのは君と離れてからだ。
離れてから気が付くだなんて馬鹿みたい。
思い返せばその気持だと感じる出来事は沢山あった。
君の近くで笑っていられるのならばそれだけで良い、そう思っていたんだ。
本当はもっと、私だけを見て、名前を呼んで、優しく抱きしめて欲しかったのかもしれない。
好きで、好きで、今すぐに会いたくて堪らないのに、私は君にとっては友達という存在でしかないから言えないんだ。
毎日交わした挨拶も今では耳に届くはずも無く、今はすれ違いざまに君に似ている人が居ると胸が高鳴るのも嫌になるんだ。
恋がこんなにも切なくて苦しいだなんてあの頃は知らなかった。
拝啓君へ
今何してますか?元気ですか?
今会いたい人が居ますか?
君が好きです。
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