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「なんで」
夏の終わりを告げる秋雨がシトシトと降りしきる中、呟いた私の声はその場にいた誰にも届かなかっただろう。
私は、傘も差さずに式場の外でずぶ濡れになっていた。その時、あまりの悲しみで何を着ていたのかすら覚えていないけれど、多分その場の常識に合う黒いワンピースだったような気がしている。
いつまでも、いつまでも、呆然と。ただ雨の中に立ち尽くして、目の前の現実に向き合えない憐れな女を、周りの人達は、まるで腫物でも触るみたいに避けて行った。
ーーごめんね、いつも守ってくれて。
ーーごめんね、何もできなくて。
私はもういっそ死んでしまおうかと思ったけれど、あなたがそれを望まない事位は知っている。
だから、私は。
ーー私は、戦う。あなたを、守る。
今まであなたがそうしてくれたみたいに、今日から私があなたを守る。私は強くなる。私は、あなたという"存在"を、私とあなたの"愛"を、きっと守り切ってみせるから。
***
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