第九章 恋の方程式

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第九章 恋の方程式

           2 「……うっ……」  布団の中で泣きじゃくっていた。  どうしてなのか、まだ忘れられないからである。 「刹那……」  もう、ほんとに不安な状態だった。 「兄さん……」  突如、一人nお少女の声がした。 「……千秋、か」 「いい加減にしなさいよ。もう、二年だよ。いつまでそうやっているつもりなの?」 「……くっ、分かっているつもりだよ。でもよ、忘れる訳には、いかないんだよ」  そう、如月刹那を。  今は何も出来ないのは、百も承知だ。 「忘れられないのは、分かるよ。でも、もう高校生だよ。私も、中学に入ったんだよ」 「……そうか」  と言い、再び布団の中に入り込んだ。  ほんと、情けないと思う千秋。 「今、父さんが捜してくれているんだ。それでも、布団の中で縮こまるの?」  え、今なんて。  父さんが捜してくれているだと。 「それは、俺を元気付けてくれようとして、くれてんのか?」 「何でよ、私だって会いたいよ。刹那ちゃんに。折角友達になれたのに、一方的に居なくなるなんて、今でも信じられないんだよ」  千秋は泣き喚いた。  どうして、こんなにも心配してくれるのだろう。  あの時、会っただけなのに。 「千秋……」  ゆっくりと起き上がり、千秋を見た。  そして立ち上がり、「ありがとう」と頭に手を置き、貴明は部屋を出て行った。 「兄さん……」  頬に涙がつたい、それは嬉しいのかも分からなかった。 「そうだよな……いつまでも引き擦ってられないよな。俺も捜すのを手伝うか」  洗面所にて決意表明する。  それは、何故かしら、諦めたくないと言う感情だった。 「……いすずか」  電話をしていた。 『……何、どうしたの? いきなり電話して来て。まさか、狂ったの』 「何でだよ!」  全く失礼な奴だな。 『はっはは、だって最近、死んだ魚の目をしてたじゃん。そして、ついに人を』 「あのな、俺は至って正気だ。いい加減にしてくれよ。人を痛み人扱いするのを」  此処最近、いすずに心配させたからな。  なのに、人をおちょくるような事を言いやがって。 『はいはい、でっどうしたの?』 「俺は……まだ諦めない。だから協力してくれないか」 『うん……それは何。何かのドッキリ? へぇーと驚けば良いの?』 「違う! 刹那の事だ。やっぱり捜した方が良い! だからさ」 『はいはい、分かっている。まだなのは、私も少しは情報を探していたんだ』 「えっ!?」  いすずは苦笑した声で言い、『じゃ会って話そうか』と言い、近くの公園に行く事になった。  公園に着き、辺りを見渡す。  相変わらず、ベンチやブランコ、滑り台など揃って有るな。 「えっと、はぁはぁ……」  流石にちょっと運動不足だな。 「ふう」  ベンチに腰を下ろし、いすずを待った。  十分後。 「貴明!」  ふと声がした。 「いすず、遅いぞ」 「……ごめん、って。何で怒るの? 女の子は時間が掛かるもんなの! そこ分からないと、人生苦労するよ」  と着飾っているいすずは胸を張って説教していた。  青いブラウスに黒いスカート。白のカーディガンを羽織って、しかも可愛いくオシャレしていた。 「はぁはぁ、でね!」 「分かったから、落ち着けよ! 早く話しようぜ」 「……もう、私だって」 「……」  何を言っているのやら、と思いつつもいすずをベンチに座らせた。 「見付けた情報ってのは?」 「はいはい、これは本当かどうかは分からないけど、良いの?」 「あぁ……頼む」  と真剣な目でいすずを見た。 「……何だか緊張するね、じゃ、確かな情報として、一つ。刹那ちゃんは地元に帰ったと思う」  と静かに言った。  そして、風が吹いた。 「でっ、刹那の地元は?」 「……其処まで分からないよ。だって、プライバシーだし」 「……うん、そうだな」  くっ、さっき。怒りそうになった。  いすずに怒りを向けても、何も解決しない。 「貴明」  俺はいすずの頭に手を載せた。 「ありがとな、今の俺は女々しい存在だ。そんな俺を……くっ、支えてくれてありがとう。ほんとに」  とふと涙が溢れた。 「そんな事で泣くなよ。男だろう!」 「……うっ、ぐっ。ごめんよ、いすず」  ベンチに座って、半分情けない顔をしていた。  双子の姉と違って、活発的な妹。 「さてと、私は帰るから。貴明、あんまり無茶はしないでよ。学生の本文は勉強何だから。意地を張って、ヤバイ物まで巻き込まぬようにね」  「……あぁ」  ヤバイ物って何だよ。 「うっ、もう……」  いすず、俺が法に触れるとでも思っているのか。  家に帰って、自室にて考えていた。  あの頃の俺は何かをしてやれる気がしていた。  そして、守ってやれると思っていた。  一体、何があったのか。  あの時のデートでもっとしっかりしていたらと思う。 「はぁ、今はひたすら待つしかないのか。……」  ふと電話が鳴った。  そう、これは。 「はい、もしもし」 『……ふう、こちらは、高嶺貴明さんの携帯で宜しいか』  と聞いた事のない声だった。  しかも男だった。 「……はぁ、何かのヤラセか」 『あー待ちなさい。まさか『詐欺』とでも思っているのか。違うから、安心してくれ。そうだな、俺は、君の父の知り合いだ』 「えっ?」  と困惑した。  父の知り合い……だと。  そういや、千秋が言っていたような。 『信じてくれ。俺は葛城。都内で探偵事務所を開いているんだ。そして、君の父に頼まれたんだ』  と何故か焦って弁解していた。 「はぁ、そうですか」 『何、もう何でも良いから早く用件を言ってって思っているような、溜息は』 「……あの」  何、この人。変な推理をし始めたぞ。 『少しは驚いてくれよ。じゃなきゃ、生きる楽しみが無くなるよ』 「はい、随分と馴れ馴れしいですね。何です、友達みたいなノリは」 『だからさ、君の父親の友達何だよ。信じてくれよ。ってか、こんな事している場合じゃないよな』  葛城は気を取り直して言った。 『確か、如月刹那についてだが……』  あっさりしているな。今、なんと。 『それで』 「ちょっと、待ってくれないか。今、なんて言いました? 名前の方」 『えっ!?』  高明の耳に疑いようがない名前が出て来た事で焦った。 『……落ち着け、貴明君』 「はぁ……はい」  葛城に言われ、我を取り戻した。 『名前の方だ。如月刹那。この娘の事を捜してくれと頼まれたんだ。分かったら、息子に伝えてくれと、言われた。だから、こうして電話した』  と淡々と話していた。 『でっ、如月家は……』 「ちょっと、待って下さい!」  と言い出す前に呼び止めた。  どうしてなのか…… 『どうしてた、やっぱり止めとくか? 普通なら、聞くに耐えないぞ。この家族、聞けば泥沼だ』  と静止した空気が流れた。 「……うっ」 『はぁ、電話じゃ埒が明かない。近くに公園に居るから、来てくれ』  と言われ、電話を終えた。  そして家を出た。  千秋がか「また外に出るの? じゃ私も」と言ったが、遠慮した。  大切な物が出来ると、人は変わる。 「はぁはぁ……」  急いでいた。 「ふう……先輩……俺、どうしたら……」  公園に着くと一人の男性が立っていた。 「はぁはぁ……」 「ふん、ふう~」  煙草を吸っては吐いた。 「……どうして走って来る。急がなくても、逃げないぞ」  と笑いながら近付いて来た。  見た目は中年で、父と同じぐらいの人。  爽やかに笑い、煙草の火を消し、仕舞う。 「改めまして、葛城です。都内で探偵事務所を開いています。以後お見知りを。って、そんなに会ったりは、しないか」  と笑い出す。  なんか、変な人だな。 「ちょっと待っててくれ」  と言い、公園を出て行った。  数分後。 「はい」  葛城は缶珈琲を買って来た。 「ありがとうございます」  缶を受け取り。 「所で……さ。依頼された件だが。話す前に問いたい。君は……知っているのか?」  と厳しい表情になり。  葛城は珈琲を飲み、一服した。 「……ふう」 「あの……誰かれ、人の事詮索はしないので。……何かあったのですか?」 「いや、つまりは何も知らないと。と言う事か……」 「……はい?」  と煙草を吸い、吐いた。 「知らない方が幸せだと思うぜ。ったく、調べれば、ほんと胸糞悪い」 「……」  葛城と言う人は唇を噛み締めていた。何故か、聞いちゃいけない風に思わされてしまう。 「……でっ、どうする?」  考えを改めていると再度、問い掛けて来た。  そうしている間に、日が落ち始める。 「……はぁ、もう折角の決心を……良いですよ。必ず見付け出す。と決めたんだ。お願いします。言って下さい」  と真剣な表情で言った。 「決意は固いようだな、分かった。俺も鬼ではないからな。……ふう~」  煙草を吸っては吐いた。 「これだ……」  と一つの資料を手渡した。  それを受け取ると、思った。  口で説明するより、見た方が早いと。 「ありがとうございます。では早速」  そして明るい場所に移動し読んだ。
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