66人が本棚に入れています
本棚に追加
第九章 恋の方程式
5
「……さてと」
豊島の町まで歩いて来た。
此処に、刹那が住んでいるのか。
「……はぁ、見てられないからな。折角来た客を追い返す訳にもいかないし。行くぞ」
衛は歩き出した。
「貴明……田舎って、こう言う感じなのかな。長閑で物思いに更けたくなるね」
「そうだな……此処なら元気に暮らせるのかもな」
と辺りを見て、気付いた。
田んぼや畑、とても穏やかに見えた。
「おい、話の続きだが……」
「うん!? なんの事だ」
衛が怖い顔をし。
「刹那の過去について、だ。勿論、詮索するような真似はしたくはないが……」
「あっ、それは……」
いすずが止めに入る。
「……俺も詳しい訳でも無いが、会って、本人に直接話せ。その方が良いだろう」
衛はそう言うと、顔色が悪くなった。
暫く歩くと民家があった。しかもあっちこっちに。
人口一万も居ないだろうと思った。
やはり周りは畑や田んぼばっかりだな。
「確か……此処等辺に……」
と衛が辺りを見渡していた。
公園があり。
「居た!」
中には三人の女の子が遊んでいた。
「……えっと」
「ほら、行けよ。その為に来たのだろう。他の二人も刹那の友達だから安心しろ」
と笑顔で言うが、俺にも心の準備が。
ふと、知り合いに気付いてこっちを向いた女の子達。
その中の一人、如月刹那だった。
そして驚いていた。
「……もう、ヤケだ。刹那!」
貴明は駆け出した。
そして、如月刹那を抱き締めた。
「……っ!」
「昼間なのに……大胆! ちょっと」
二人はドン引きして、引き剥がそうとした。
「どうして……高嶺君が……」
「えっ……高嶺……君って。あの」
あの、って何だよ。
「ほんと……良かった。覚えてくれて」
「刹那、何? その人と知り合いなの」
赤い髪の女の子が戸惑いの中に居た。
そして少し嬉しさの中に居たが、離れて。
「ふう~もう。何で?」
と話をするようにベンチに座っていた。
「所で、高嶺って、あの高嶺貴明で良いんだよね」
「あぁ……そうだけど。他にどんな高嶺が居るんだよ!」
茶髪の娘に疑いを掛けられるなんて、不幸だ。
「自己紹介がまだだったね」
と茶髪の娘が笑顔で言った。
「私は伊月美奈、刹那の親友で幼馴染みだよ。宜しくね」
と気さくに言って、手を出した。
「……あぁ」
そして、そのまま握手した。
「所で、刹那と付き合っていたんだね。……聞かせて貰えない」
「美奈! 何でそんな事を!」
刹那が突然と叫んだ。
これが今の刹那か。
「刹那、折角来てくれたのに、追い返すの?」
「そう言う訳では……無いけど。だって、此処まで、どうやって分かったのか、気掛かりだよ」
と焦っていた。
そう、これはシークレットだから、警察にとってはバレたら、信用がガタ落ちだ。
「貴明……どうするの? これ」
いすずが心配していた。
「……はぁ、でも良かったよ。怒ってないかと、日々心配していたんだ。高嶺君、ごめんね」
刹那は申し訳なく頭を下げた。
「刹那ちゃん、変わったね」
「うん、いすずちゃんもごめんね。急に居なくなって」
と顔を赤くしていすずを抱き締めた。
「ふわっと!」
「ほんとにごめんね。そしてありがとうだよ。中学の頃の私を助けてくれて。友達になってくれて……」
「刹那ちゃん……」
いすずは戸惑いの中に居たが、こうやって話せる事が嬉しくて堪らなかった。
こうして、俺達は如月刹那に再会を果だし、豊島に一泊して行く事にしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!