第九章 恋の方程式

1/1
前へ
/52ページ
次へ

第九章 恋の方程式

             5 「……さてと」  豊島の町まで歩いて来た。  此処に、刹那が住んでいるのか。 「……はぁ、見てられないからな。折角来た客を追い返す訳にもいかないし。行くぞ」  衛は歩き出した。 「貴明……田舎って、こう言う感じなのかな。長閑で物思いに更けたくなるね」 「そうだな……此処なら元気に暮らせるのかもな」  と辺りを見て、気付いた。  田んぼや畑、とても穏やかに見えた。 「おい、話の続きだが……」 「うん!? なんの事だ」  衛が怖い顔をし。 「刹那の過去について、だ。勿論、詮索するような真似はしたくはないが……」 「あっ、それは……」  いすずが止めに入る。 「……俺も詳しい訳でも無いが、会って、本人に直接話せ。その方が良いだろう」  衛はそう言うと、顔色が悪くなった。  暫く歩くと民家があった。しかもあっちこっちに。  人口一万も居ないだろうと思った。  やはり周りは畑や田んぼばっかりだな。 「確か……此処等辺に……」  と衛が辺りを見渡していた。  公園があり。 「居た!」  中には三人の女の子が遊んでいた。 「……えっと」 「ほら、行けよ。その為に来たのだろう。他の二人も刹那の友達だから安心しろ」  と笑顔で言うが、俺にも心の準備が。  ふと、知り合いに気付いてこっちを向いた女の子達。  その中の一人、如月刹那だった。  そして驚いていた。 「……もう、ヤケだ。刹那!」  貴明は駆け出した。  そして、如月刹那を抱き締めた。 「……っ!」 「昼間なのに……大胆! ちょっと」  二人はドン引きして、引き剥がそうとした。 「どうして……高嶺君が……」 「えっ……高嶺……君って。あの」  あの、って何だよ。 「ほんと……良かった。覚えてくれて」 「刹那、何? その人と知り合いなの」  赤い髪の女の子が戸惑いの中に居た。  そして少し嬉しさの中に居たが、離れて。 「ふう~もう。何で?」  と話をするようにベンチに座っていた。 「所で、高嶺って、あの高嶺貴明で良いんだよね」 「あぁ……そうだけど。他にどんな高嶺が居るんだよ!」  茶髪の娘に疑いを掛けられるなんて、不幸だ。 「自己紹介がまだだったね」  と茶髪の娘が笑顔で言った。 「私は伊月美奈、刹那の親友で幼馴染みだよ。宜しくね」  と気さくに言って、手を出した。 「……あぁ」  そして、そのまま握手した。 「所で、刹那と付き合っていたんだね。……聞かせて貰えない」 「美奈! 何でそんな事を!」  刹那が突然と叫んだ。  これが今の刹那か。 「刹那、折角来てくれたのに、追い返すの?」 「そう言う訳では……無いけど。だって、此処まで、どうやって分かったのか、気掛かりだよ」  と焦っていた。  そう、これはシークレットだから、警察にとってはバレたら、信用がガタ落ちだ。 「貴明……どうするの? これ」  いすずが心配していた。 「……はぁ、でも良かったよ。怒ってないかと、日々心配していたんだ。高嶺君、ごめんね」  刹那は申し訳なく頭を下げた。 「刹那ちゃん、変わったね」 「うん、いすずちゃんもごめんね。急に居なくなって」  と顔を赤くしていすずを抱き締めた。 「ふわっと!」 「ほんとにごめんね。そしてありがとうだよ。中学の頃の私を助けてくれて。友達になってくれて……」 「刹那ちゃん……」  いすずは戸惑いの中に居たが、こうやって話せる事が嬉しくて堪らなかった。  こうして、俺達は如月刹那に再会を果だし、豊島に一泊して行く事にしたのだった。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加