誰のため?

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たとえば、放課後の教室で好きな女の子が涙を流していたらどうしたって気になるわけで。 「なんで泣いてるの?」 「うっ、ヒック……うるさいバカ……ほっといて」 バカと怒られたって、ほっとけと言われたって放っておきたくないわけで。 彼女の席の前から椅子を引き出し腰を下ろす。赤く腫れた目元を見て胸がざわざわした。喉の奥が苦しい。 電気のついていない教室は薄暗くて、この状況に寂しさというオプションを備えつけ演出しているからなかなかに厄介だ。 なので、こんなしんみりとした空気を壊したい僕はぷにっと彼女の右頬をつまんでみる。 「な、ちょっといきなりなにするの!」 涙でぐちゃぐちゃになった顔で、彼女は僕を鋭い視線で見つめてきた。 「あ、泣きながら怒ってる」 「なにそれ!誰のせいだと思ってるの!」 彼女の机に肘をつき、ふざけた口調でからかえば唇を尖らせながら責められた。
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