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ぷにっとまた、彼女の頬をつまむ。すれば再びじわじわと赤に染まる頬。いったいどこまで赤くなるのか。眉根にぎゅっと皺を寄せて僕を睨んでくる。
と、彼女の瞳から零れる涙がなくなった。
「ちょ、ちょっと本当になんなの!」
「あー、照れながら怒ってる」
「バカ!誰のせいだと!」
「……」
思わず口元が緩んだ。
たとえば、放課後の教室で好きな女の子が涙を流していたらどうしたって気になるわけで。
バカと怒られたって、ほっとけと言われたって放っておきたくないわけで。
「僕のせい」
「え、」
「ぜんぶ、僕のせい」
下睫毛についた涙の雫を優しく親指で拭う。彼女の頬の赤を作ったのも、「バカ」と怒るその表情もぜんぶ僕のせい。
僕じゃない男のために流していた涙が止まったのも、僕のせい。
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