#2.5 深海渚の見える世界

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自分と関わる全てを拒絶したい。 そう思い、音楽プレイヤーを通して、大音量で音楽を聞いた。 道を歩く人も、障害物も、通り過ぎていく無機物も、何もかもが不愉快だった。 これから新しい集団社会の中で生活することですら嫌なのに、どうしてまた友達まで作らなければならないのだろう。 自分が周りよりも、人と馴染むことを嫌っているという事実は認める。 しかし、誰かに友達を作れと言われる筋合いはない。 本当に、彼は一体何がしたいのだろう。 こんな自分と関わろうとするなんて、彼に何のメリットがあるというのだ。 でも、これだけは言える。 自分自身を取り巻く世界の全てを拒絶したいと思っている人は、少なくない。 その証拠に、この世界は壁で埋め尽くされている。 電車に揺られながら、死んだ魚のような目で、手元の携帯に夢中になっている通勤、学校帰りの若者。 大股を広げて新聞を読んでいる男性。 人前にも関わらず、化粧を直す女性。 周りの視線を気にせずに、大声で話す学生達。 どうして彼らは、自分だけ、もしくは自分たちだけが、そこにいるように振舞えるのか、自分には理解出来なかった。 でも、共通して思うことは、どうして皆ひとりひとり違うはずなのに、自分以外、皆同じ顔に見えてしまうのだろう。
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