ジュリーと女友達

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 何という展開だろう。  何というミラクルな朝だろう。    電話を切ってから一時間も経たない内に「ゲットしたよ!最後の二枚だった!」と、かなり興奮気味の真由美ちゃんからチケットゲットの電話がかかって来た。それを聞いた私も久しぶりに大いに興奮した。    夢にも思わないの顛末に、自室の東の窓からポカポカと注ぎ込む春のような朝の日差しも相まって、私の体は優しさに包み込まれるように暖められた。ジュリーのコンサートに行けるどころか、親友との再会も確約出来たのだ。  長い人生、こんな素敵な日もあってもいいんだ、手放しで幸せな気持ちになっていいんだ。──って、まるで世の中の不幸を全部背負っている人みたいな言い方だけど、本当にそう思った。  ところで真由美ちゃんはまだガラケーを使っていて、来月にはスマホに変えるのだと言っていた。彼女がスマホに変えたら、まずジュリーの動画がとれだけ素晴らしい時間を与えてくれるかを伝えたい。私のように、あれよあれよとジュリーの新たな沼に(はま)って行く真由美ちゃんが想像できる。  ジュリーのドタキャン騒動は思いがけない友人との再会という(贅沢な言いぐさながら)退屈な日々に、多大なる楽しみを与えてくれた。しかも再会場所はジュリーのコンサート会場という、これ以上ない最高のシチュエーションだ。  真由美ちゃんが電話の切り際に言った「やっぱり繋がっていたのかな……」という言葉。それって私と?とは、聞き返さなかったけど、本当にその通りだと思った。みんな見えない何かで繋がっているのだ。ジュリーとだって絶対繋がっているに違いない。  そんなこんなで今やっと、現実の季節の移ろいに合わせるかのように、私の心も雪解けの季節を迎えようとしている──ジュリーと、女友達からのたった一本の電話で。 (次ページに追記有り)
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