ジュリーと女友達

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 ■  あれは十七才の桜の季節だったと思う。  私は高校に入ってすぐに友人となった田中真由美ちゃんと二人で、鹿児島本線を走る鈍行列車に揺られていた。    自ら言うのも何だけど、随分と殺風景で寂しげだった車両の中は私たち二人が乗り込んだ途端に、年頃の女の子から自然と放たれる光で、多少なりと明るさを増したのではなかっただろうか……と、まあしょうがない、ここは百歩譲って私自身のことは置いておくとしても、私の向かいの席に座った真由美ちゃんの可愛らしい屈託のないコロコロとした笑顔は、瑞々しいオーラでもって少なくとも私を柔らかく照らして、ほんわりと温めてくれていた。  福岡から熊本へ──ガタンゴトンと緩やかなスピードで窓の外を過ぎていくのどかな田舎の景色を眺めながら、熊本で待ち受けている夢にまで見た大イベントに思いを馳せて、私はそわそわと落ち着きなく浮き足立っていた  さて、熊本で私たちを待ち受けていた大イベントとは──。  これを言えばある程度の年代の方には自ずと年齢がバレてしまうかもしれないけど、私たちが各駅停車の鈍行で向かっていたのは──沢田研二ことジュリーのコンサートだ。
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