ジュリーと女友達

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 陳腐な言葉で言うと、ジュリーは私にとって初恋の王子様だったのである。そんなジュリーがお隣りの県に来ると聞けば、是が非でも、いや何が何でも王子のお姿を直に自分の目で見ないわけにはいかなかった。(今思えば子供だった私が知らなかっただけで、当然その日のコンサートに限らず、ジュリーは私の住む福岡にも何度も来ていたはずである……何せ情報が……というよりも、やはり子供だったのだ。)  一九七一年に、ジュリーがいたザ・タイガースが解散した。それは仲間を導いていた先頭の松明の火が突然消えたようなものだったと思う。その後他のグループの解散も続き、僅か四、五年と極短いグループサウンズの時代はあっけなく終焉を迎えたのだ。  先に話したように、タイガース解散後、ソロ歌手になってテレビに帰って来た大人なジュリーは、キラキラ輝く唯一無二のスーパースターになっていた。  もちろん大人のジュリーも好きだが、タイガース時代のジュリーは全くの別物だ。私より九歳も年上のジュリーだけど、今振り返るとその頃のジュリーはまだ少年の面影をその表情や眼差しに多分に残していたように思う。その少年の面影は(あや)うい美しさでもって激しくもありまた儚げでもあり、その上気品まで持ち合わせた──ジュリーは間違いなく日本の多くの女の子の最上級の王子様だった。
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