ジュリーと女友達

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 きっとあの日のジュリーはそれから後、私に起きた膨大なくだらない出来事の記憶のせいで、 脳の奥深くに閉じ込められているのだろう。  ここ最近は次から次に襲ってくるやっかいな病気もあって、仕事を辞めるという選択しかなく、(それでも有り難いことに)日がなぼんやりと暮しているせいか、日に何度も昔の出来事を何の脈絡もなくふと思い出すことがある。例えば洗濯物を干していたり、食器を洗っていたり、髪の毛を乾かしている時に──残念ながらいずれも余り思い出したくないことばかりだ。  そういうのって何だろう──思い出せば口の中が瞬時に苦くなるくらいの辛くイヤな思い出は、パステル色したハッピーな思い出に押し勝つのだろうか。ネガティブな感情を伴う思い出は、その憂鬱の重みで幸せだった出来事を深い闇にぎゅっと押し込んで、浮上することを断固として邪魔しているように思える。  それでも無意識に、気が重くなるような思い出を選って取り出しているのは誰でもない自分自身であるのだから、これはきっと若干暗めで、いささかやっかいな私の性格によるものに違いない……と又もやネガティブな思いを抱えて、今日も憂鬱の沼にズブズブ一人沈み込む。
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