ジュリーと女友達

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 ■  私と真由美ちゃんは二人して二十歳そこそこで結婚して、また同時期に男の子の母親になった。それからの真由美ちゃんとの関係性は、子育てに忙しくもあったし自ずと会うことも少なくなって行き、自然と二人の仲は学生時代の濃密だったものから、それより大分軽いフレンドライクなものに変わって行った。今で言うママ友的なものになったのだ。  同じ年齢で結婚したにも関わらず、堅実にきちっとした家庭を築いていく彼女に比べ、私の結婚は、悲しいかな世の中に五万とあるような若さ故の無謀な暴挙であったとしか言いようがない。その暴挙の詳しい内容の暴露はここでは控えることにする。  しかしながら私なりに懸命に生きて、薄氷を踏むようだった日々も苦い思い出だと振り返られるような年齢に達し……どうにか今に至っている。生活の場は故郷の福岡から千キロと随分遠く離れてしまった。十何年住んでもいまだにしっくり馴染めない北関東の地で、息子と二人でそれなりに暮らしているのだが、今に至るその間のことを一言で言うと「色々あった」としか言いようがない。  出来るだけ気づかないふりをしているけど、あれよあれよと時は過ぎて、すでに人生は終盤に差し掛かっている。いつの間にか息子との生活は、守る者と守られる者が逆転したように変化した。しかしどう考えても、色々と問題を(はら)んでいるのが明らかな現実には、ここでは一旦目をつぶることにしよう。  運命のあの日は、相変わらず所在無く過ぎていた秋も半ばの午後のことだった。  テレビをつけるとこれも相変わらずの、代わり映えしないワイドショーのチャンネルだった。ドサッとソファに座り、見るとはなしにテレビに目を向けると、たくさんのリポーターに囲まれているジュリーが──というよりも赤いカタカナで書かれた「ジュリードタキャン」の文字がパッと目に飛び込んできた。それはその日の前日(二〇一八年十月三十一日)行われる予定だった埼玉のコンサートを、ジュリーがドタキャンしたとか何とかでワイドショーが大騒ぎしているものだった。  
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