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「マジかよ。」
スマホ画面を見て俺は思わず呟いてしまった。ちょっとスマホを貸してと言われ渡したらこうなったのだ。こんなことになるって分かっていたら絶対渡さなかったのに。
「お、予約完了したみたいだな。」
呑気な上司の声に再びイラッとする。
「雪下は仕事もちゃんとできているんだから、今度はプライベートだな。」
余計なお世話だ。俺はもう恋なんてしない、人を好きにならない、あの日から。後で、こっそりキャンセルしようとしたらキャンセル代が申し込み金の3倍だった。申し込み金ですらなかなか高いのに・・・。
「はい、これお金。」
無造作に財布からお金を出す上司。俺は上司が持っているお札をじっとみて、上司の顔を見る。
「幸せになってほしいんだよ、雪下。」
上司は俺に起こった出来事を知らないはずだし、もちろんここに働いている社員も知らないはずだ。普通に仕事して普通に生きている。何もおかしくないはずだ。でも俺より長く生きて働いている子の人には見抜かれているのだろうか。俺はお節介でたまに少しお、ウザいけど根は優しい上司の目を見ることはできなった。
「行くだけ、行ってみます。」
頭を少し下げると肩をポンポンされて去っていった。本当に行くだけ。この人のお節介の優しさにはなんとなく答えなきゃとは思った。
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