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「本当に雪下君のLINE入ってる・・・」
ベッドにもぐりこみスマホを見る私。何度見ても信じられない。何度見ても雪下律の名前が画面に映っている。
「わ!」
雪下君からLINE電話が来た。
「和田、今、話せる?」
雪下君の低音ボイスが耳元で聞こえる。大丈夫という声が裏返って顔が赤くなる。雪下君に見られなくてよかった、この顔が。
「よかった。少し話せる?」
他愛もない話を10分くらい話す。好きな食べ物とかよく行くカフェとか。さっきから食べ物の話ばっかだねって笑う。雪下君とこうして電話しているのは奇跡だと思う。
「雪下君。」
電話を切る前に思い切って言う。手をぎゅっとして背筋を伸ばして。
「今、すっごい月がきれいだね。」
現代国語でやっていたこと、雪下君は覚えているかな。昔の人が好きな人に贈っていた言葉。
「きれいだね。和田と見ているからかな。」
これが付き合って最初の夜だった。好きって言えないから好きを伝える言葉を雪下君に届けた夜だった。
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