雪下君

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水族館に向かう電車に乗っているときから私はドキドキが止まらなかった。 仕事が夜中までかかったという雪下君は少し眠そうで座席に横並びに座っていると、私の肩に頭を預けてきた。 整った顔に長いまつ毛。 雪下君は私が持っていないものをたくさん持っている。私はどれだけ頑張っても雪下君の持っているものには届かない。そんな雪下君でもいつも苦しそうに何か抱えている。何かは教えてくれない。この先、一生、教えてくれなくてもいい。ただ、雪下君の苦しみが少しでもなくなればいいと思う。
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