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「律の両親、亡くなってるの知ってる?」
知らない。そう顔に出てたのか原さんは唇の端をつり上げてさらに言った。
「律はあんたをただ利用してんだよ。心にぽっかり穴が開いて寂しくてたまらなくて。和田さんといてその寂しさ紛らわしてるだけなんだよ。本当は誰だっていいんだよ。律って結構ひどい男だよね。」
なぜか今日いい天気だねと言うような明るい声で言う原さん。
雪下君は顔が真っ青だった。通行人がちらちらこちらを見る。あまり声は大きくないので
迷惑にはなってないけど、何かあったのかという目で見ている。
「ふざけんな。自分のことばっかしか考えられない里佳子と俺を一緒にするな。」
「あら。性格悪い者同士お似合いじゃない?」
原さんはにっこり笑って余裕の態度でいる。
「律だって自分のこと優先して取り返しのつかないことしたくせに、今更いい人ぶらないでよ。」
「二度と俺の前に来るな。」
雪下君は私の手をひいて水族館から出た。
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