雪下律の過去

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「ごめん。今日帰るわ。」 高校の帰りに友達とよくカラオケに行ったりハンバーガーショップに入り浸っていたけど、母さんがこの状態になってから母さんのことが気になって早く自分だけが家に帰ることが多かった。 また学ランのポケットに入っている携帯が震えている。また母さんが道に迷ってしまったのか、早く行かなきゃ。 友達だったら自分の今の状況を話せばきっと分かってくれるとは思う。けど俺は誰にも言えなかった。 可哀想だって思われたくないし。 おかしい家だと陰で笑われたくないし。 表面上でしか分かってくれないなら言わないほうがいい。誰かに教わってなくてもこういうことはよく分かっていた。異質な存在は排除されてしまうから。 「あのさ、ずっと思ってたけど、ちょい前から律、付き合い悪くない?」 里佳子が帰ろうとした俺の通学鞄を掴んだ。 思わず舌打ちしそうになる。ずっと携帯が震えている。母さんのそばにいなきゃいけないのに。こうなるなら里佳子と付き合わなきゃよかった。告白されたから、可愛いしなんとなく付き合ったらかなりべったり体質だった。母さんのことがあるから余計に俺の行動を把握しようとするところとか本当に無理だった。 「そうか?」 男友達は鈍感で本当に助かる。お陰で里佳子は黙ってくれた。 「また明日。」 笑顔で自然な感じで。店から出ると俺は速足の状態から走り出した。
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