雪下律の過去

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母さんと病院に行った。 「お母さんはこれからどんどんいろんなことを忘れたりできることが少なくなってくるだろう。お母さんのためにも君のためにも入院をおすすめするよ。」 母さんの今の状態はやっぱり父さんの死が原因だろうと言われた。 「・・・入院させません。」 自慢じゃないけどうちはお金に困ってはいなくて入院の選択はできるのだけど。 入院という選択に頼りそうになった自分が嫌だった。 正直しんどかった、母さんといるのが。心のどこかにやっぱり少しでも思ってしまう部分がやっぱりあって。医者の先生の顔を見ては言えなかった。 「罪悪感を抱える必要はない。」 先生はカルテを見ながら俺に言った。 「それでも俺は父さんが死んだとき、母さんのこと支えるって決めたんです。支えなきゃって自分から思ったんだです。だから俺は母さんと一緒にこれからも・・・。」 「・・・そうか。」 先生は低く冷たい声で言いながら紙に何か書き込んでいた。 「何かあったらいつでも僕に連絡しなさい。些細な事でもいいから。君がお母さんうぃお支えるように僕は君の心の支えくらいにはなりたい。だから抱え込まないように。」 無表情な顔で俺に連絡先を書いたメモを渡した。神経質でやや右上がりの字。 「・・・はい。」 涙が出そうになった。友達にも話さなかったことをこの人になら話したくなった。 今日初めて会ったこの人に。
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