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雪と深雪は生まれた頃からの付き合いで、幼馴染だった。
母親同士が親友で、同じ産婦人科で一日違いで雪のほうが早く生まれた。深雪は難産で帝王切開の末に生まれた。名前が似ているのは、母親たちの示し合せではなく本当に偶然だった。何物にも染まらず白く清らかに。母親たちがそう願いを掛けたかどうかは解らない。ただ、二人が生まれたのは真っ白い雪が舞い降りる日だった。
物心ついてから深雪はずっと雪のあとをついて歩いた。
ふわり、白い塊が自分の後ろにいることを、雪は喜んでいた。
いつまでもこのままなら良いなと思いながら、追いついた深雪の髪を撫でたり、頬を触ったりした。
無垢な新雪の時間が、そう長くは続かないだろうことを、雪は子供ながらに気付いていた。
柱時計の音が鳴る。
ぼおん、ぼおん、と。
小学校、中学校、高校。
時はどんどん過ぎて、雪も深雪も成長する。
深雪は雪から見て不思議な程、純粋だった。時に踏み荒らされることのない新雪を未だに保つ少女を、雪は遠い存在のように感じた。いずれ淡雪のように儚く融けてしまうのではないかと、そんな恐れさえ抱いた。
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