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巽はそれが至極当然の決定事項のように言って、緑子の首筋を撫でた。その手つきだけは優しく、巽の憤りを悟らせない。恐れとは違う感触に、緑子はぶるりと震えた。
残照を受けて燦然と光る木苺の茂みの横に、仰臥する形に組み伏せられた緑子は、抵抗する様子を見せない。乱暴に、なぶるように巽が唇を奪ったら、湿った吐息とごく小さな喘ぎ声が漏れた。
自分の衣服に手を掛ける弟に、緑子はそれまでと一変した顔を見せた。
――――待っていたのよ。
巽の手が驚きに止まる。緑子はほぼ半裸の状態で緑の褥にいる。
ずっと待っていたのよ。巽。
わざと巽の嫉妬心、怒りを煽ったのだと告白した緑子に悪びれる様子はない。
赤い宝石の横で自分を奪えと望む。
図られたと知っても巽は腹を立てなかった。寧ろ、姉の想いが嬉しかった。
自分だけではなかった。
緑子の耳朶を甘く噛んだ。緑子の唇の、奥の奥まで存分に蹂躙し、巽は暴君のように振る舞った。緑子の白い肌のあちこちに、木苺とは異なる赤が咲いた。全身にその赤は散り、緑子の身体を舞うようだった。緑子は時々、嬌声を上げた。巽はますます猛り、緑子のそこかしこを執拗なまでに愛撫し、口づけし、舐めて、噛んだ。潰れて赤くぐちゃぐちゃになった木苺みたいに。その瞬間は、二人共忘我だったが、殊に木苺の赤が迫って感じられた。
緑子自身がルビーのように染まる。
残照さえ消えた薄闇に、巽だけの赤い宝石が光っている。
禁断の果実に手を出した。
もう二人は戻れない。
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