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この学校には恋桜という不思議な桜がある。
普段は決して花を開かせることはないのだが、恋に目覚めた時……その桜は花を咲かせたように見えるらしい。
「……葉桜、だな」
しかし僕の目に映るのは満開の桜ではなく、花びら一つないただの葉桜。
とかなんとか見ていると、どうやら今回の相手が来たようだ。
確か同じ学年の人だったはずだが……。
いつもなら遠くで見守っているだけだったのに、今日は花菜の希望で桜の木の裏で告白を見守ることに。
というかどうやって見守るんだよと思いながら告白に耳を傾ける。
「藤崎さん、好きです俺と付き合ってください」
「……ごめんなさい」
彼女の答えはいつもと変わらぬノー。
何度も見てきたはずなのに、その答えに少しホッとしていた。
「その良ければなんだけど理由を聞いてもいいかな? 他に好きな人がいるならいるって言ってくれれば俺も諦めが付くから」
「…………」
しかし男の言葉に花菜は答えない。
(……花菜の好きな人、か)
今思えば僕は花菜の告白を断るためについてくることはあっても、どうして断るのかとか、そもそも花菜に好きな人がいるのかすら知らないままだった。
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