そして君は鳥になった

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 君はまだ言葉を知らない。僕もまだ、この気持ちをなんと言ったらよいのか分からない。それでも、手を取ることはできる。 「まあ、すみません」 「いえいえ。こんにちはって、ご挨拶できる?」 「…こーちわ」  今までで一番上手に言えたと思う。縦長に開けた君の口は、「お」の口。きっと、「おおお」と感嘆してくれているのだろう。スナップをきかせて元気に振るその右手が、そうだと言ってくれている。君に誉められることは、なんてうれしいことなのだろう。 「おにいちゃん、上手にご挨拶できるのね」 「まだ一歳くらいですか?しっかり歩けるんですね、すごいねえ」  君はまた、しゃがみこんだ。指先で芝生をなぞる。右に左に、ものすごい速さで。ぴょんぴょん飛び交う芝の群れ。上唇を突き出しながら、集中する君の顔を見ていたら、そんなに面白いのかと気になった。  君が興味のあることは、僕も興味がある。君の見ているものは、僕も見たいと思う。だから、僕もしゃがみこむ。芝を飛ばすと、たのしかった。君と一緒だからだと思う。そのうち君はこっちの芝生に手を伸ばしてきた。おでこが頬っぺたにこつんとぶつかる。ふわふわの髪が、鼻をくすぐった。
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