序章

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王子の母となる朱璃(しゅり)は 生まれは平民で、楊己が外で見初め 婚姻を結ぶと宣言した 政略的な婚姻が常の王族、ましてや国王という 立場にある者が平民を王妃として 迎えるというのだ 当然周りからは反対の声が多く出た しかし楊己は反対を押し切り婚姻を結ぶ それでも楊己の人徳と、朱璃自身の人柄もあり 多少の時間は要したものの 最終的には反対していた王族や家臣も 王の決断を認め祝福し王子の誕生を心から喜んだ 楊己の崩御後、城内の離れに住処を移されるも 駿河の計らいにより、ある程度の自由と 権限を与えられ、楊己に忠実だった家臣達の 支えもあり不自由のない生活を送っていた しかし、前王を慕う多くの家臣の中にも 善からぬ考えを持つ者は、少なからず存在し 元平民の前王妃が生した王子の存在を 疎ましく思う家臣もいたのだ 前王楊己の亡き後、その者達は ここぞとばかりに手を組み 反発勢力として水面下で徐々に形を成していく 現王駿河は、良くも悪くも 分け隔てなく耳を傾ける…そこにつけ込み あの手この手で策を労し、ジワジワと時間をかけ 王の心を蝕み、歪ませていく いつしか駿河の王子に対する慈しむ愛情は 形を変え、服従させる支配欲と 異常なまでの執着心へと変わっていった
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