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傀儡の王
王の間にて戴冠の儀が厳かに行われ
傀儡の王子は、晴れて傀儡の王となる
駿河は愛おしげに透央の頭に王の証をのせ
そのまま頬を包み、口づけをする
本来、神聖であるはずの儀式に
明らかにそぐわない行いに
王族や家臣は嫌悪を隠しもせず
あからさまに顔を顰めるが、見てみぬふりをする
駿河が狂っている方が彼らにとって有益なのだ
むしろ、そうなる様に仕組んだのだから
心の病を理由に国務を代理で執り行ない
思うがままにしてきた
そして今日
新たに据えられる王も、計画通り
既に傀儡へと成り下がっている
何かと理由を付けて御するのは容易い
長い時間をかけ策を労してきた者達は
さぞ報われた気分だろう
楊己の崩御から10年
民を捨て置き
私利私欲を満たす事しか興味のない
強欲な者だけが、我が物顔で城内を闊歩する
正義を掲げ、国政に異を唱えた者達は
権力や陰湿な画策により排除され
悪政に歯止めをかける術を誰も持たない
民からの敬意や信頼は無いに等しく
この国が終焉へと向かっている事は
誰の目に見ても明らかであった
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