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おばあさんは急かすように俺たちを家の中に招き入れる。短い廊下の一番奥の部屋に通された。おばあさんはドアを開けて俺たちに中の様子を見せる。
「ここが書斎よ」
俺たちがやってきたのは他でもない、魔法古書の買取だった。このおばあさんは前の日にナナちゃんの店にやってきて、買取の依頼をして来たのだ。
「こんなに……。これ全部、魔法書なんですか?」
中に入った俺は辺りを見回した。六畳ほどの広さのある部屋は机と椅子がある以外は、本棚の本で囲まれている。敷かれた絨毯の上には本棚に入りきらずに平積みされているものまで。
「びっくりするでしょう。こんなに集めて。死んだおじいさんが集めていたのよ。どうしようか処分に困っていて。ほら、魔法が使えるものだから簡単には燃えないでしょう」
このおばあさんのように事情がある場合には出張買取もしていた。ただこの部屋の様子にナナちゃんも困惑したようだ。
「これはちょっと予想以上に多いですね。本当にこれ全部を買い取っても構わないのですか?」
「ええ。ぜーんぶ、買い取って頂戴。持って行ってくれるならお金もいらないぐらいだわ。空っぽになったらこの部屋、物置にしようと思っているの」
なかなか薄情なおばあさんだと思ったが、思い出の品は別にあるのだろうし、それなら部屋を有効活用した方がいいのかもしれない。
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