第一章 “ときめき”を知らない大人たち。

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「俺さ、現実でときめいたことないんだよね。」 ランチタイムに新商品のパンを一口かじりながら隣の部署の同僚は言った。 最近、ランチタイムによく顔を合わせるようになり、話す機会も増えた同僚。 「現実でっていうのは?」 ときめいたことがないのではなく、現実でときめいたことがないらしい。 「姉が持ってた少女漫画を読んで昔は何度もときめいたんだけど。非現実だからこそ、ときめいていたんだよな。」 「あー、なるほど。」 いつもモテていて女関係に困ったことなんて一度もない。そんな同僚が純粋に“ときめき”について考えていただなんて。 と言うか少女漫画でときめく男子とか可愛いわ。 「だからさ、この年まで未経験なのが、なんか恥ずかしいというか。」 かじりかけのパンを口に運びながら気恥ずかしそうに言った。 「実は私もなんだよね。」 「え?」 「…その、ときめき?」 「マジで?!」 「うん。」 「仲間がいた~!」 「こらこら、パンがこぼれてる。」 こんな近くに仲間がいたなんて。
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