空虚の中

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 ラブホテルを出る頃にはもうお天道様がしっかりと顔を覗かせていた。都会は春先の日差しも痛い。  都会の街並み。早朝は閑散としていることなど知らなかった。閑散としていると言っても、僕の住んでいるところより人は圧倒的に多い。だがイメージとは違ったのだ。 いつでも人で賑わっているイメージとはかけ離れていた。平日の早朝はどの土地でも人などいないことを知った。  ほとんど周りに人がいないことを入念に確認した後に、色が剥げたジーンズのポケットから先ほど嬢にもらった名刺を取り出した。乱雑に押し込まれた名刺には少しだけシワがついていた。それがやけに味があるように感じ、ポケットに入れたことを少し誇らしくなる。  凛花。華やかな蝶が舞う名刺にその名前が記されていた。無駄に整った顔立ちを思い出すと、その名前が合っているのかもしれないと思う。凛としているという意味合いとは違うのかもしれないが、何故か名前と顔が妙にマッチした。  凛花は何歳だろうか。僕よりも年下だろうか。姉よりも年下だろうか。父が連れてきた女より年下だろうか。僕は彼女を抱けなかったことよりもそんなことばかりを気にしていた。
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