第5章【同種に・新しい生活②】

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 「あの時は、そんなに直ぐにいなくなるなんて思わなかったんだ。自分が医者なのにね。毎日、奇跡みたいな事もあれば、その逆もある事を見ていたのに。自分の奥さんは大丈夫って思ってしまったんだ。きっと、そんな僕に神様は呆れてしまったんだね。1人寂しい奥さんをこのまま、この世に置くのは苦しすぎるって思ったんだね。それならって神様は自分たちの所に連れてってしまったんだ。それに気付いた時には僕は1人だった。さっきは思い出してしまってね。恥ずかしいよね。僕。」  全部を吐き出し、それでも尚、思い出しているように、ゆっくりとフレンチトーストにナイフを入れ始めた。  「そんなことないよ?今は、僕たちがいるでしょ?ずっと1人だった先生が寂しくならないように、きっと奥さんが会わせてくれたんだよ。」  「優くんは本当に優しいね。天使みたいだ。」  「天使になるには大きいけどね。羽はあるけど(笑)さあ、先生食べて。お仕事もしてたんだし。先生がお腹空かせていたら僕が奥さんに怒られちゃう(笑)」  先生が食べ始めると、優は有李斗の横へ行った。  「有李斗には僕がいるから。だから僕には有李斗がいてくれなきゃダメだよ?」  そう有李斗に囁く。その声が聞こえたのか、有李斗が目を覚ましそうになる。  「先生、有李斗起きるかも。」  「ん、はいはい。」  先生は、フレンチトーストを1口、口に入れてベッドのところへ来た。  「んん~。優?」  「有李斗。僕はここにいるよ。」  「ん?ここは家か?」  「うん。自分ちの方が落ち着くでしょ?」  「ああ。何か安心するな。息が普通にできる感じがする。」  病室の時と違って、楽そうな顔をしている。  「有李斗くん、気分はどうだい?」     
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