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「あの時は、そんなに直ぐにいなくなるなんて思わなかったんだ。自分が医者なのにね。毎日、奇跡みたいな事もあれば、その逆もある事を見ていたのに。自分の奥さんは大丈夫って思ってしまったんだ。きっと、そんな僕に神様は呆れてしまったんだね。1人寂しい奥さんをこのまま、この世に置くのは苦しすぎるって思ったんだね。それならって神様は自分たちの所に連れてってしまったんだ。それに気付いた時には僕は1人だった。さっきは思い出してしまってね。恥ずかしいよね。僕。」
全部を吐き出し、それでも尚、思い出しているように、ゆっくりとフレンチトーストにナイフを入れ始めた。
「そんなことないよ?今は、僕たちがいるでしょ?ずっと1人だった先生が寂しくならないように、きっと奥さんが会わせてくれたんだよ。」
「優くんは本当に優しいね。天使みたいだ。」
「天使になるには大きいけどね。羽はあるけど(笑)さあ、先生食べて。お仕事もしてたんだし。先生がお腹空かせていたら僕が奥さんに怒られちゃう(笑)」
先生が食べ始めると、優は有李斗の横へ行った。
「有李斗には僕がいるから。だから僕には有李斗がいてくれなきゃダメだよ?」
そう有李斗に囁く。その声が聞こえたのか、有李斗が目を覚ましそうになる。
「先生、有李斗起きるかも。」
「ん、はいはい。」
先生は、フレンチトーストを1口、口に入れてベッドのところへ来た。
「んん~。優?」
「有李斗。僕はここにいるよ。」
「ん?ここは家か?」
「うん。自分ちの方が落ち着くでしょ?」
「ああ。何か安心するな。息が普通にできる感じがする。」
病室の時と違って、楽そうな顔をしている。
「有李斗くん、気分はどうだい?」
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