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先生が聴診器を片手に有李斗の横へ来る。
「さっきまでの事が嘘みたいに楽です。頭の中も、さっきよりスッキリしています。」
砂嵐のような映像が、まだ残ってはいるものの、眠る前と違って画像が薄くなっている。
「そう。やっぱり優くんの匂いが濃いところにいるからかもしれないね。傷口は痛くない?」
「痛みはありますが我慢できない感じじゃないです。」
「我慢はしなくていいよ?」
「ええ。でもあんまり薬は飲みたくないので。」
「それ、さっきも言ってたよね。でも我慢はよくないから。特に、今の有李斗くんには。なるべく取り除けるストレスは取り除きたいからね。」
「はい。」
先生が診察をしている間、ボッーとしていた、何も考えず、ただ優の匂いだけが鼻を通り、頭の中の力が抜けていく。病室では、あんなに頭の中まで力が入っていたのに、今はスッーと風が抜けていく感じがする。
「どうかした?」
「いいえ。頭の中が軽くなったなあと思って。」
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