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有李斗は、やはり元気な優が自分に合わせているのには無理があると思った。何もないかのように優から手を離そうとする。でも優が手を握り直してきた。そんな事をしてくるとは思わなかったので、思わず優の顔を見てしまった。それがわかっていたかのように、頬を膨らませて『またやったな、怒ってるんだぞ』と言うように有李斗を見てきた。それを見ていた先生は『ククッ』と笑いを堪えていた。
「大、ダメですよ。人んちのものを勝手に。さ、食事の支度をするので手伝って下さいね。優、すみませんが台所をお借りしますね。何かいじってはいけない食器とかありますか?」
「冷蔵庫の中のチョコは食べないでね。あとは大丈夫。」
「チョコですか?って、大。言われる傍から手を出さないで下さい。多分それ、有李斗さまのなんで。」
「有李斗の?優のじゃなくて?」
「ええ。有李斗さま、時々お酒を召し上がる時に食べてましたから。自分に合ったメーカーらしいですよ?多分、その辺では売ってないと思います。」
多田は、時々と話している。でも本当は時々ではないし、優の中での有李斗のチョコにまつわる時々は、1袋全部食べようとする方で、多田でさえも知らない事を自分だけが知っていると思うと、とても嬉しかった。
「優、何か楽しい顔してるな。」
隣で見ていた有李斗が不思議そうな顔で言う。
「そう?でも、そうかも。だって僕しか知らない有李斗の秘密だもの。だからって、さっきのはダメ。」
折角、良い顔をしていたのに、手を離そうとした事を怒られてしまった。
「悪い。」
「もう、手錠つけてもらおうかな~。」
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