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カウンター席を立つと、不良少年はぶっきらぼうに叫んだ。
「何だよ先輩風吹かせて!」
『どんな能力か知らないけど功を焦ると死ぬよ。まずは周りの人に訓練してもらいな』
「お前なんか、すぐに口も聞けないくらい偉くなってやる! 覚えてろー!」
知らないというのは幸せなことだ。
部屋に戻るとトニーは言った。
「僕、あの人の従兵にだけは…なりたくありません」
『同感だ。トニーをアイツの配下にするなんて言ったら、辞表を叩きつけてやる』
それにしてもこれから毎晩、あの子供に絡まれるのか。トニーに夕食を買ってきてもらおうかと思いながら入り口に目をやると、サツキが入って来た。
「お邪魔するね…柊馬先輩♪」
『先輩は貴女でしょ。さつき先輩』
「誕生日、柊馬君と1週間しか違わないし」
たとえ1週間でも、サツキは大学1年生で僕は高校3年生だ。馴れ馴れしい態度をとっていたらさっきの子供と同じになってしまう。
サツキは隣に腰かけるとニヤニヤと笑った。
「不良のグレイト君、今度は森さんと平田さんにケンカを売ってたよ」
森とは狼族の戦士、平田とは虎族の戦士のことだ。よりにもよってあの2人にケンカを売るとは…身の程知らずも、ここまで行くと清々しいものだ。
『ゴーダさんにケンカを売るのも時間の問題だな』
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