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〈静かに〉
リュシアンはいつの間にかカーペットに姿を見せていた。彼は床に耳を近づけると、やがてニヤッと意地悪な笑みを浮かべた。
〈狼族の森と、豹族の平田が、小僧をはめるつもりらしい〉
どうやら、子供だからと見逃す気はないようだ。はめるということは、魔王の洞窟に置き去りにするということか。
深くは関わりたくないし、ここは両者のお手並み拝見といこう。
4月25日。例の2人は旅支度を整えていた。
「ギルド長から聞いたぜ…何でもスゲー能力なんだろ」
「そんなことありますよ~ 先輩方~」
「大きく出たな。こりゃ魔王が出ても俺たちの出番ねーかも!」
「お前らの出番ねーから!」
グレイトが叫ぶと森と平田は煽て笑いをした。さては、いい気分にさせてから一気に地獄に突き落とす腹か。本当に僕は先輩たちに睨まれなくて良かったと思う。まあ、グレイトもへこまされた後で、この2人の仲間になりそうだが。
「でもあんたら、どうして従兵を連れて行かないんだ?」
「そりゃ、グレイト君の邪魔になるからに決まってるでしょ!」
「そーそー! グレイト君は特別、従兵も優秀。俺たちとはスタートが違うんだよ~」
「そっかそっか~」とグレイトが笑うと、森は「愚民ども、行って来るぜ!」と叫びながらギルドを出た。サツキを見ると一生懸命に笑いを堪えていた。
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