前幕 夢の残骸

3/9
前へ
/278ページ
次へ
「本当に動いてたのか?」 「はい」 「全弾、命中したんだな?」 「はい。鑑識で調べてもらえればハッキリするはずです」 「……中の人物はどうした?」 「係長、それはすでに申し上げましたし、防犯カメラの映像を見れば分かると思います。あの休憩室にはカメラがありましたから」 「確かに、あったな」 「なら……」 「だが写ってなかった」 「え?」 「映像を再生してみたら、ザーザー砂嵐だ。何も映ってない」 「……なぜです?」 「こっちが聞きたい。都合良く壊れたか、誰かがデータを消したか」  警視庁刑事一課の係長が、意味ありげに見つめてくる。 「……私が消したと、おっしゃりたいのですか?」 「そう疑ってる者も、何人かいる。まあ俺は違うと思うがね。そもそもオマエに潜入捜査を命じたのは俺たちだ。元から仕組んでた可能性はない」 「当然です。仮にあの中に誰かが入っていたとして、私がその人物を射殺したとします。なら死体はどこへ消えたんですか? 防犯カメラは入り口の廊下や建物の出入り口など、いたる所にあります。全部壊れてたんですか?」 「いや。壊れてたのは現場のものだけだ」 「なら、私が死体の処理などしていないのは分かるはずです」 「まあな」
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!

118人が本棚に入れています
本棚に追加