落幕 夢の終わりは命の終わり

9/25
115人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
 さて。そろそろチェックアウトの時刻がせまってきた。  このホテルを出る時間だ。 「私が頂点よ。歴史に名前を残す大女優。永遠の女神になる」  リビングの窓からカンヌの町並みを眺めつつ、そう呟く。  この選ばれしビューティー、綾本花音の栄光の軌跡が。  これからさらに高みを目指して駆け上がっていくのよ。  そう心の中で呟き、カンヌの風景を脳裏に焼き付けて。  花音はキャリーバックの取っ手をつかんで。  チェックアウトのために部屋から出ようと、振り返った。  そこで、花音の体は、彫像のように動かなくなった。
/278ページ

最初のコメントを投稿しよう!