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「世界征服って...そんな野心、ないっすよ。
てかこれ、そもそもの話、何種類あるんだろう...。」
いいなー、いいなーと、心底羨ましそうにバッタもんのボールを手に言う、管理人さん。
「...いります?」
すっかり酔いが覚めてしまった僕は、聞いた。
彼はグワッとこちらを振り向き、聞いた。
「...いいの?」
クスリと笑い、そのボールを彼の手のひらの上に乗せる。
管理人さんは満面の笑みを浮かべ、言った。
「ありがとう、めっちゃ嬉しいっ!
ならおれも今から、ガチャるよ。
それで星が6個のが出たら、久米くんにあげるねっ!」
小銭を手に、謎のポージングを決めてから、今度は彼がガチャガチャを回した。
「今のおれは、無敵っ!
今度こそ...出よ、神龍っ!」
転がり出たのは、長い間僕が追い求めていた、6つ星のボール。
「...すごいな。」
思わず、呟いた。
「ふふふ。
だって今のおれは、無敵だもーん♪」
にんまりと、笑う彼。
「ありがとうございます、管理人さん。
...マジで、嬉しいっ!」
いつになくテンションが上がり、叫ぶみたいに大声で言った。
彼に手渡されたオレンジ色のボールを、満月に向かい掲げる。
透明のそれはキラキラと光を反射させ、輝いた。
その様はとても幻想的で、これはチープなスーパーボール等ではなく、本当に願いを叶えてくれるドラゴンが出てくる、魔法の玉なんじゃないかだなんて、柄にもない事を考えてしまった。
「神龍が出てきたら、写メ撮っといてね。」
真顔でそんな事を言うこの人は、本当に無敵なのかも。
ゲラゲラと腹を抱えて笑う僕の姿を、彼はただ不思議そうに見つめていた。
【...fin】
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