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職場の飲み会からの、帰り道。
ガチャガチャのボックスが、幾重にも重ねて設置されているのを見掛けた。
そこには僕が、ずーっと探し求めていた台が置かれていて。
ほろ酔いだった事もあり、僕はその場にしゃがみこみ、財布から小銭を取り出すと、投入口に入れた。
「わぁ、ガチャだっ!
懐かしいっ!久米くん、回すの?」
コンビニ帰りらしい、マンションの管理人さん...佐藤紗樂さんに見られてしまった。
「こんばんは...、ええ。
これね、あとひとつでフルコンプって所で、前住んでた家の近所から撤去されちゃって。」
いい年をした大人がこんなのをやろうとしてるだなんて、笑われないだろうか?
...ちょっと、恥ずかしい。
「ド○ゴンボールのヤツじゃないのっ!
...7つ集めたら、願い事が叶っちゃうね。」
興奮した様子で、管理人さんは言った。
「そうなんっすよ。
星が6個のヤツ待ちなんです。
...何としても、揃えたい。」
ぐっ、と拳を握りしめ、答えた。
そう...、そのあと一個が出ないまま、散々投資したというのに、コンプリートを目前にその台は姿を消したのだ。
彼は僕の言葉を聞き、真剣な表情でこくこくと何度も頷いた。
「「出よ、神龍っ!!」」
ひとりごとの、つもりだったのに。
...僕らの声が、揃った。
手を添え、ぐるりと取っ手を回すと、半分透明、半分ブルーの球体が、ごろんと転がり出た。
「星、いっぱいあるっ!何個かな?」
ワクワクを隠せないといった感じで、管理人さんが覗き込む。
「...いきますよ、開けますっ!」
そのカプセルを、強引に抉じ開けた。
すると中から出てきたのは...。
星が8個ある、オレンジ色のボールだった。
「嘘だろ...。」
愕然と、呟いた。
よくよくそのボックスを見てみると、一言も『ドラゴン○ール』の商標は、入ってなくて。
たぶん海外で、この星の数の重要性も分からないまま、適当に量産された代物なのだろう。
...いわゆる、バッタもんってヤツだった。
管理人さんも少しの間、ポカンと口を開けてそれを見つめていたのだけれど。
...しばらくすると彼は瞳を輝かせ、鼻息荒く言った。
「すごいっ!すごいよ、久米くんっ!
これならきっと、世界征服も夢じゃないよっ!」
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