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「おい、見ろよ。三色のやつらもいるぜ」
「ああ…一色組も、色も豊富だ」
「それより、あっちの隅の方を見ろ。『消せるマーカー』まで…」
「なんだよそれ…」
「ペンだけじゃないよ。消せるなら、僕らシャープペンシルだって、もういらないじゃないか」
「これは…勝てる気がしない…」
まるで通夜のような重たい空気が、棚中に溢れた。それを、通路の反対側の棚で並んでいた鉛筆たちが、他人事のように見つめている。
「流行に流される連中も大変ね」
「本当だわ。私たちは代わり映えはしないけど、いつの時代も子供や職人が変わらず買っていってくれることに感謝をしないと」
まさに対岸の火事、といった具合にひそひそ話す鉛筆たちを横目に、棚の下の方に少ない数ではあるがぎっちりと詰められているクレヨンや色鉛筆たちが、他の筆記具たちに聞こえないようにさらに小さな声で話していた。
「俺たちは元々人気がないから、あんな風に夢を持ったり、不安がることもなくて良いな」
「うん。でも最近少しずつ、大人が私たちを手に取るような気がしない?」
「子供のためだろ?」
「ううん、たぶん本人が使うような感じがするわ」
「へえ…知らないところで、また変な流行でもきているのかな」
終
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